花み屋のリアルとフィクション

花を観察している大学院生のフリースペース

肩こりがきつい歳になった

 両腕をピンと頭上に伸ばし、後ろに向けてゆっくりと降ろす。すると、左の肩甲骨のあたりから、ボゴッボゴボゴッと強烈な音が響く。その音を聞いた人は、ほとんど同じことを言う。

「大丈夫ですか?」

 私が聞きたい。私の肩は大丈夫なのか。

 音の原因は、ズバリ、「肩こり」である。首から肩、肩から肩甲骨の下にかけて柔軟性の欠片もない鉄板が広がっている。痛みと苦しみを引き起こす鉄板である。その鉄板を変形させて、苦しみを少しでも緩和させるため、ここ最近はしょっちゅう腕や肩を回し、ボゴボゴッという音で近くの人を驚かせている。

 しかし、いつまでも周りの人を驚かせ続けるわけにもいかないし、私自身もこの鉄板を担いでずっと生活するのは嫌だし、どうにかこの肩こりを改善したい。そこで、まずは肩こりについて知ろうと思った。早速、定義を調べてみると、簡潔な答えが見つかった。

「肩こりの明確な定義はない (森本 2010)」

 そうなのか。

 森本 (2010)の総説によれば、肩こりは病名ではなく、症状名であり、本人が後頭部から首、肩、背中にかけての筋肉の緊張を中心とする不快感、違和感、鈍痛などを感じる症状を「肩こり」と呼ぶ。肩こりは、その原因により、本態性、症候性、心因性の3つに分類できる。1つめの本態性肩こりは、姿勢の悪さや運動不足、寒さなどが原因として挙げられている。2つめの症候性肩こりは、関節や筋肉の機能障害により、物理的に動かしにくくなったり、血行不順が引き起こされたりすることで、生じるものである。3つめの心因性肩こりは、うつ病パニック障害などで筋肉の緊張状態が続くことが原因と考えられている。

 さて、私の場合、幸いにして、四肢に異常はなく、能天気な性格であるから、症候性と心因性の肩こりとは考えにくい。そうすると、私の肩こりは本態性で、姿勢の悪さ、運動不足、寒さなどが原因と考えられる。私の生活リズム、今の季節を考慮すると、運動不足、寒さが原因とは考えにくい。つまりは、姿勢の悪さが一番の原因と考えられる。

 ここで、姿勢の悪さと言われて、思い当たる節はたくさんある。例えば、私の身体は、両肩の高さや両足の筋肉のつき方が左右で異なる。これを今までは、人間誰だって左右の使い方の癖が1つ2つあるのだから自然なこと、と気にしないでいたが、これは姿勢が悪い証拠とも言える。さらに、もっと直接的な証拠としては、整骨・整体院の方々に、通院するたび必ずと言っていいほど、骨盤と背骨が歪んでいますよ、と言われてきた経験がある。

どうやら私の肩こりは、姿勢の悪さによるところが大きい。肩こりを改善するため、当面の私の目標は、姿勢改善となりそうだ。

 

 森本昌宏. (2010). < 総説> 肩こりの臨床--適切な診断と治療のために. 近畿大学医学雑誌, 35(3-4), 151-156.

 

結婚改姓の煩わしさ⑤

現状の改姓手続きは見直されるべきである

 ほとんどの人は結婚を人生に一度しか経験しない。さらに、改姓手続きは、その結婚した2人のうち、1人しか経験しない。つまり、改姓手続きは、他の行政手続きに対して、人々が経験する回数も人数も少ないため、その煩わしさを訴え、簡略化する動きが少ないのだと思う。しかし、結婚を決断する人の多くは、日本社会を動かす労働力としてかけがえのない若者で、現在の改姓手続きは、その若者の時間と金を奪っているのが現状だ。

 改姓手続きは簡易化できないのか、そもそも改姓が必要なのか。この現状は、見直される必要があるだろう。

 

①はじめに

②改姓手続きとは

③直接訪れなくてはいけない窓口が圧倒的に多い

④消えていく時間とお金

⑤現状の改姓手続きは見直されるべきである

結婚改姓の煩わしさ④

消えていく時間とお金

 仮に、11つの窓口を訪れるのに、それぞれ往復30分かかったと考えよう。また、これらの窓口は他の方々も訪れているので、必ず待ち時間が生じる。その待ち時間に加え、事務の方々の作業時間がある。それらのため、各窓口に平均15分滞在したとする。そうすると、全部の機関に滞在した時間は、11 x ( 30 + 15 ) = 495 分 = 8時間15分。

 さらに、その機関を直接訪れなくてはいけない機関であれ、そうでない機関であれ、記入が必要な書類は1枚とは限らない。むしろ、1枚で済むことの方が稀かもしれない。それぞれで書類全てを記入するのに平均10分かかったとしよう。そうすると、記入に必要な時間は、16 x 10 = 160 分 = 2時間40分。そうすると、全部で記入時間は、8時間15分 + 2時間40分= 10時間55分。ほぼ半日。

 半日もあったら何ができただろう。本を読むことも、プログラミングを書くことも、近場の調査地に出かけることも、実験を進めることも、休むこともできた。

 では、実際にかかったお金はどれくらいなのだろうか。改姓手続きにかかった必要経費は以下の通りである。

・窓口へ行く交通費 x 11件

・住民票の写しの発行手数料 x 3枚程度

・パスポートの発行手数料 x 1つ

・新姓の認印購入費 x 2つ

・新姓の銀行印購入費 x 1つ

 先ほどの11個の窓口に行くのに往復で平均500円かかったとすると、交通費で5,500円。住民票の写し3枚の発行に3 x 300 = 900円、パスポートの切り替えに約4,000円、出来合いのものが売っていない苗字なので新しく印鑑を3つ注文することで5,000円。これらを合計すると15,400円。1ヶ月の水道光熱費が払える金額である。

 10時間55分と15,400円。必要な時間と経費だったとはいえ、改姓をしなければ、必要なかったものである。そう思うと、結婚してウキウキな気持ちも吹き飛んでしまった。

 

①はじめに

②改姓手続きとは

③直接訪れなくてはいけない窓口が圧倒的に多い

④消えていく時間とお金

⑤現状の改姓手続きは見直されるべきである

結婚改姓の煩わしさ②

改姓手続きとは 

 改姓手続きと聞いて何を思い浮かべるだろうか。ここで、市区役所で婚姻届を提出すること、と考えた人は改姓したことがない人だろう。改姓手続きは、市区役所で婚姻届を提出し、住民票の氏名の姓を変えるだけでは終わらない。自身の氏名が登録されている全ての機関に連絡を取り、書類を書き、変更の手続きをしてもらうことまで終えて、はじめて改姓手続きが終わったと言える。

 では、一体いくつの機関に連絡を取る必要があるのだろうか。筆者が改姓手続きを依頼した機関は以下の通りである。

・区役所(戸籍・住民票・マイナンバーカードの改姓)

・銀行2件(口座名義の変更)

・警察署(免許記載事項の変更)

・大学の所属学府の事務(在籍登録名・学生証の改姓)

・大学の所属研究室の事務(登録口座の改姓)

・大学の所属プログラムの事務(登録口座の改姓)

・大学の奨学金係(奨学金の貸与者の改姓)

大学生協(登録名義の変更)

学生総合共済(登録名義の変更)

・クレジットカード会社2社(カード名義の変更)

・年金機構(夫の勤め先事務に委託)

・健康保険(父・夫の勤め先事務に委託)

・パスポートセンター(パスポートの改姓)

自動二輪売店自動二輪自賠責保険の名義変更)

・保険会社(自動二輪の任意保険の名義変更)

・携帯会社(携帯の名義変更)

 全部で18の窓口と連絡をとった。私の場合は、入籍とともに引っ越したので必要なかったが、人によっては、水道局や電力会社、ガス会社、賃貸マンションの管理会社にも連絡を取らねばならないだろう。これら全てに連絡を取り、訪れ、書類を書き、改姓手続きを終えるのはなかなか大変である。しかし、結婚をして改姓をする人には必ず必要な作業なのである。これらを怠れば、日々の生活や仕事に様々な支障が生じる。そのため、婚姻届を提出したら、そこから迅速に済ます必要がある。

 

①はじめに

②改姓手続きとは

③直接訪れなくてはいけない窓口が圧倒的に多い

④消えていく時間とお金

⑤現状の改姓手続きは見直されるべきである

結婚改姓の煩わしさ③

直接訪れなくてはいけない窓口が圧倒的に多い

 上述の通り、改姓手続きで連絡を取るべき機関が多いのが大きな問題である。ただ、その訪れるべき機関の一覧を見たところで、あまり実感がわかないであろうから、実際にどれほどの時間と金が費やされるか計算してみよう。

 まず、改姓手続きで連絡を取る機関は、その機関を直接訪れなくてはいけない機関と、そうでなくネットか電話である程度済ませられる機関に大別できる。ここで、父・夫の勤め先事務に委託した年金機構と健康保険については省く。

 その機関を直接訪れる必要がある機関:11件

・区役所(戸籍・住民票・マイナンバーカードの改姓)

・銀行2件(口座名義の変更)

・警察署(免許記載事項の変更)

・大学の所属学府の事務(在籍登録名・学生証の改姓)

・大学の所属研究室の事務(登録口座の改姓)

・大学の所属プログラムの事務(登録口座の改姓)

・大学の奨学金係(奨学金の貸与者の改姓)

大学生協(登録名義の変更)

・パスポートセンター(パスポートの改姓)

・携帯会社(携帯の名義変更)

 ネットか電話である程度済ませられる機関:5件

学生総合共済(登録名義の変更)

・クレジットカード会社2社(カード名義の変更)

自動二輪売店自動二輪自賠責保険の名義変更)

・保険会社(自動二輪の任意保険の名義変更)

  あらら?これだけネットが発展している日本社会なのに、ネット上で手続きができるのはわずか4件にとどまっているのね〜。

 なんて皮肉はさておき、実際にどれほどの時間とお金がかかっているか見てみよう。

 

①はじめに

②改姓手続きとは

③直接訪れなくてはいけない窓口が圧倒的に多い

④消えていく時間とお金

⑤現状の改姓手続きは見直されるべきである

結婚改姓の煩わしさ①

 結婚して数ヶ月の間、とても腹が立つ出来事が続いた。めでたく結婚して、とても幸せなはずなのに、イライラした時間がとても多かった。あっという間に、時間も金も消えていった。最終的には、結婚なんぞしなければ良かった、とさえ考えた。

 そんなことを考えさせた原因は、結婚に伴う改姓手続きである。改姓手続きなんぞ、単に姓を変えるだけではないか、何が難しいものか、と思うかもしれない。そう思う人のために、この文章を書いている。ぜひ改姓手続きの煩わしさについて知ってほしい。おそらく現代の日本社会において、これほど煩わしい手続きは、他に存在しない。

 

①はじめに

②改姓手続きとは

③直接訪れなくてはいけない窓口が圧倒的に多い

④消えていく時間とお金

⑤現状の改姓手続きは見直されるべきである

 

ハゲた話

 風呂上がりにドライヤーを使っていたときである。頭頂部にドライヤーを当てるため少し頭を鏡側に傾け、鏡に映った自分の頭を見て固まった。白い丸が見える。私の髪は黒い。なぜ白い丸が見える?白い丸に恐る恐る指で触れてみると、つるつるした感触が指に伝わった。頭には、普段経験したことがない頭皮を直接触られる感覚があった。私は事態を把握した。

 10円ハゲができたのだ。

 とても動揺した。いまだかつて自宅内でこれほど動揺したことはなかったと思う。しばらく鏡を見続け、つるつるした感触から手を離せなかった。そして、ふと、ここ1箇所だけなのだろうか、他にもあるのではないか、という不安に襲われた。私はたまらず頭中を触りまくった。幸いにして、頭頂部の1箇所だけであった。

 さて、落ち着いてくると、気になるのは原因と治療方法である。一般的に10円ハゲと呼ぶものは円形脱毛症という歴とした病気である。英語ではalopecia areataと言うらしく、AAと省略している研究が多々ある。

 アスキーアート? 
  彡 ⌒ ミ   彡 ⌒ ミ
  (´・ω・`)   (´・ω・`) いいえ、alopecia areata
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/つ/ ̄ ̄ ̄/
  \/   /\/   /
    ̄ ̄ ̄    ̄ ̄ ̄

 調べてみれば、頭におけるAAは毛が抜けた場所の数や大きさから、単発型・多発型・全頭型・蛇行型の4つに分類される。

単発型:脱毛したところが1ヶ所のみ(今回の私)
多発型:脱毛したところがたくさん
全頭型:頭全体が脱毛してきている
蛇行型:髪の生え際が帯状に脱毛してきている

 AAが発症する要因は、疲労や感染症による肉体的・精神的ストレスが考えられているが、実際のところ明確な原因が特定されない場合も多いようだ。毛が抜ける仕組みとしては、「自身の体にとって異物となるもの(ウイルスやがん細胞など)を認識して破壊するT細胞が、自分自身の毛を生産する細胞を攻撃してしまい、毛が抜ける」とが考えられている。少し専門的に言えば、自己抗原をターゲットにした自己免疫反応が誘発されるということである。

 では、このような要因でAAを発症した後、どうしたら良いのだろうか。AAは、「外見上の印象を大きく左右するので患者自身の悩みは深く、生活の質(QOL)にも大きく影響する」ので、患者側は早く治したいという気持ちが大きい。とはいえ、どんな治療を行っても明日明後日にモサモサの髪に回復するということはありえない。回復まで早くとも数ヶ月〜1年はかかる。

 現在、一般的に行われている治療法として、ステロイド局所注射療法・局所免疫療法・ステロイド外用療法・紫外線療法などがあり、それぞれ発症したAAの程度や型によって使い分けられる。ただ、ステロイドは、体内の免疫力を抑えるのに有効である分、副作用も大きく、多用しない方が良い。そのため、AAの単発型や軽度の多発型の場合は、脱毛は一時的な場合が多く、発症後1年以内で自然に回復してくるため、経過観察することで十分と考えられていた。

 このことから、私は頭頂部の10円ハゲをとりあえず放置する、という結論に至った。このハゲを発見する数ヶ月前にひどく疲れてしまった時期があり、そのストレスでAAを発症してしまったのだろう。文献によれば、単発型AAは経過観察でOKらしいから大丈夫だろう。ただ、頭頂部のちょうど分け目のあたりにできた10円ハゲは目立つ。ハゲが気になることがストレスで更にハゲたら、たまったものでない。私は馴染みの美容師さんにハゲが目立たない髪型にしてもらった。

 それから半年が経ち、無事に毛が生えて伸びてきた。生えてきたばかりのとても短い毛はオバケのQ太郎並に立っていた。今でも少し立っている。

 

 

参考文献

坪井良治, 板見智, 眞鍋求, 天羽康之, 伊藤泰介, 乾重樹, ... & 齊藤典充. (2017). 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版. 日本皮膚科学会雑誌, 127(13), 2741-2762.